1.コンデンサとコイル
やる夫:
抵抗分圧とかキルヒホッフはわかったお。でもまさか抵抗だけで回路が出来上がるはずはないお。
やらない夫:
確かにそうだな。ここからはコンデンサとコイルを使った回路を見ていこう。
やる夫:
お、新キャラ登場だお!一気に2人も登場とは大判振る舞いだお!
やらない夫:
ここでは素子の性質だけ触れることにする。素子の原理や構造はググるなり電磁気の教科書見るなり してくれ。
やる夫:
OKだお。で、そいつらは抵抗とは何が違うんだお?
やらない夫:
「周波数依存性をもつ」という点で抵抗とは異なっているんだ。
やる夫:
周波数依存性って・・・なんか難しそうだお・・・
やらない夫:
ここまでは直流的な解析、つまり常に一定の電圧に対する解析をしてきた。でも、ここからは周波数の概念が出てくるから交流的な回路を考えていくぞ。
やる夫:
いきなりレベルアップしたような感じだけど、なんとか頑張るしかないお・・・
やらない夫:
まぁそう構えるな。慣れればどうってことない。
さて、交流を考えるときに一つ大事な言葉を覚えよう。「インピーダンス」だ。
やる夫:
インピーダンス、ヘッドホンとかイヤホンの仕様に書いてあるあれだお!
やらない夫:
そうだよく知ってるな。あれ、単位は何だったか覚えてるか?
やる夫:
確かやる夫のイヤホンは15[Ω]ってなってたお。Ω(オーム)ってことは抵抗なのかお?
やらない夫:
まぁ、殆ど正解だ。正確には「交流信号に対する抵抗」だ。
やる夫:
交流信号のときはインピーダンスって呼び方をするのかお。とりあえず実例を見てみたいお。
やらない夫:
そうだな。じゃあさっき紹介したコンデンサのインピーダンスを見ていこう。
やる夫:
なんか記号がいっぱい出てきたお・・・なんか顔文字(´・ω・`)で使う記号とかあるお・・・
やらない夫:
まずCっていうのはコンデンサの素子値だ。容量値といって単位は[F](ファラド)。Zはインピーダンス、jは虚数、ωは角周波数だ。
やる夫:
ん?jは虚数なのかお?数学ではiって習ってたお。
やらない夫:
数学ではiを使うが、電気の世界では虚数はjを使う。電流のiと混同するからだな。
やる夫:
そういう事かお。いや、でもそもそも虚数なんて使う意味がわからないお。虚数って確か現実に存在しない数字だお。そんなのがなんで突然出てくるんだお?
やらない夫:
それにはちゃんと理由があるんだが、そこについてはまたあとでやろう。とりあえず、今はおまじないだと思ってjをつけといてくれ。
やる夫:
うーん、なんかスッキリしないけどわかったお。で、角周波数ってのはなんだお。
やらない夫:
これに関しては定義を知るより式で見たほうがわかりやすいだろう。
やる夫:
2πかける周波数かお。とりあえず信号周波数に2πかけたものだと思っておけばいいのかお?
やらない夫:
ああ、それでいい。じゃあもう一度コンデンサのインピーダンスの式を見てみよう。周波数によってインピーダンスが変化するっていうのがわかるか?
やる夫:
ωが分母にきてるお。だから周波数が低いとZは大きくて、周波数が高いとZは小さくなるって事かお?
やらない夫:
その通り。コンデンサというのは低周波だとZが大きく、高周波だとZが小さい。つまり、低周波を通しにくく、高周波を通しやすい素子ということだ。
もっとざっくり言えば、直流を通さず、交流を通す素子とも言えるな。
もっとざっくり言えば、直流を通さず、交流を通す素子とも言えるな。
やる夫:
なるほど、なんとなくわかったお。
やらない夫:
じゃあ次はコイルだ。
やる夫:
さっきと使ってる記号は殆ど同じだお。
やらない夫:
そうだな。Lっていうのは素子値だ。インダクタンスといって単位は[H](ヘンリー)。
やる夫:
この式を見るとコンデンサの逆だお。低い周波数だとZが小さくて、高い周波数だとZが大きくなるお。
やらない夫:
そう、コイルは低周波をよく通し、高周波はあまり通さない素子だ。
やる夫:
OK、二つの素子のキャラクターは把握したお。
2.ローパスフィルタ
やらない夫:
それじゃあ、まずはコンデンサを使った回路を見ていくぞ。
やる夫:
コンデンサと抵抗を組み合わせたシンプルな回路だお。早速計算するお!
やらない夫:
いや、ちょっと待て。確かに計算は大切だ、でも回路を理解するにはそれだけじゃだめなんだ。回路図をみて、「こういう動作をする」ってざっくり把握する能力が非常に重要だ。この回路もまずは計算無しで大体の動作を考えてみるぞ。
やる夫:
そ、そうなのかお・・・てっきり計算こそ全てだと思ってたお。
やらない夫:
まずは超低周波、つまり直流(DC)のときどうなるか考えてみよう。
やる夫:
コンデンサは超低周波ではめちゃくちゃインピーダンスが高い、∞[Ω]だお。つまり全く電流を通さないと思うお。
やらない夫:
そうだな。それを考えると、直流では等価的にこういう回路になる。
やる夫:
完全にGNDから浮いてしまってるお。
やらない夫:
ということは、この回路には(この状態では)全く電流が流れない。Vout端子の先には何もつながってない事になってるからな。電流が流れなければVin-Vout間での電位差も生まれない。(オームの法則より)
やる夫:
ってことはVin=Vout。入力した信号がそのまま出力に出てくるお。
やらない夫:
そうだな。つまりこの回路は低周波はそのまま通すってことだ。
次は高周波のときを考えてみよう。
次は高周波のときを考えてみよう。
やる夫:
高周波ではコンデンサはインピーダンスは低くなるお。極端な話、高周波ではインピーダンスがゼロ[Ω]になるお。
やらない夫:
インピーダンスがゼロってことはこんな風に考える事ができる。
やる夫:
VoutがそのままGNDに繋がってるお。これだといくらVinから信号を入力してもVoutは電位ゼロだお。
やらない夫:
まとめるとこういうことになる。
このような性質から、この回路を「ローパスフィルタ」という。
・低周波はそのまま通す
・高周波は通さない
・高周波は通さない
このような性質から、この回路を「ローパスフィルタ」という。
やる夫:
低周波(ロー)をパスするからローパスフィルタかお。なんとなく、この回路の動作は把握できたお。で、具体的にどのくらいの周波数までがパスされるんだお?
やらない夫:
それをこれから計算で求めていくぞ。
やる夫:
お、ついに計算だお!でも、どう考えたらいいか分からないお。
やらない夫:
この回路も、実は抵抗分圧とやることは同じだ。VinをRとCで分圧してVoutを作り出してると考えよう。
やる夫:
とりあえず、コンデンサのインピーダンスをZと置くお。それで分圧の式を立てるとこうなるお。
やらない夫:
じゃあ、このZにコンデンサのインピーダンスを代入しよう。
やる夫:
こんな感じだお。でも、この先どうしたらいいか全くわからないお。これで終わりなのかお?
やらない夫:
いや、まだまだ続くぞ。とりあえず、jωをsと置いてみよう。
やる夫:
また唐突だお、そのsって何なんだお?
やらない夫:
それは後程解説する。今はとりあえず従っておいてくれ。
やる夫:
スッキリしないけどまぁいいお・・・jωをsと置いて、式を整理するとこうなるお。
やらない夫:
ここで2つ覚えてほしいことがある。
1つは今求めたVout/Vinだが、これを「伝達関数」と呼ぶ。
2つ目は伝達関数の分母がゼロになるときのs、これを「極(pole)」と呼ぶ。
1つは今求めたVout/Vinだが、これを「伝達関数」と呼ぶ。
2つ目は伝達関数の分母がゼロになるときのs、これを「極(pole)」と呼ぶ。
やる夫:
たとえばこの伝達関数の極をsp1とすると、こうなるってことかお?
やらない夫:
あってるぞ。そういう事だ。
やる夫:
で、この極ってのは何なんだお?
やらない夫:
ローパスフィルタがどの周波数までパスするのか、それがこの「極」によって決まるんだ。この計算は後でやろう。
最後に「利得」について確認しよう。利得というのは「入力した信号が何倍になって出力に出てくるのか 」を示したものだ。式としてはこうなる。
最後に「利得」について確認しよう。利得というのは「入力した信号が何倍になって出力に出てくるのか 」を示したものだ。式としてはこうなる。
やる夫:
色々突っ込みたいところがあるお・・・まず、入力と出力の関係を示すなら普通に伝達関数だけで十分だお。伝達関数と利得は何が違うんだお。
やらない夫:
それはもっともな意見だな。でもちょっと考えてみてくれ、さっき出した伝達関数は複素数を含んでるだろ?例えば「この回路は入力が( 1 + 2 j )倍されます」って言って分かるか?
やる夫:
確かに、それは意味わからないお。というか、信号が複素数倍になるなんて自然界じゃありえないんだお・・・
やらない夫:
だから利得の計算のときは複素数は絶対値をとって虚数をなくしてやる。自然界に存在する数字として扱うんだ。
やる夫:
そういうことかお、なんとなく納得したお。
で、"20log"とかいうのはどっから出てきたんだお?
で、"20log"とかいうのはどっから出てきたんだお?
やらない夫:
利得というのは普通、[db](デジベル)という単位で表すんだ。[倍]を[db]に変換するのが20logの式だ。まぁ、これは定義だから何も考えず計算してくれ。ちなみにこの対数の底は10だぞ。
やる夫:
定義なのかお。例えば電圧が100[倍]なら20log100で40[db]ってことかお?
やらない夫:
その通りだ。
と、ここまで長々と用語や定義の解説をしたが、ここからはローパスフィルタの周波数特性のグラフを見てみよう。 周波数特性っていうのは、周波数によって利得と位相がどう変化するかを現したものだ。ちなみにこのグラフを「ボード線図」という。
と、ここまで長々と用語や定義の解説をしたが、ここからはローパスフィルタの周波数特性のグラフを見てみよう。 周波数特性っていうのは、周波数によって利得と位相がどう変化するかを現したものだ。ちなみにこのグラフを「ボード線図」という。
RCローパスフィルタのボード線図 |
やる夫:
低周波では利得は0[db]つまり1倍だお。これは最初やったからわかるお。それが、ある周波数から下がってるお。
やらない夫:
この利得が下がり始める点がさっき計算した「極」だ。このときの周波数fcを「カットオフ周波数」という。カットオフ周波数fcはどうやって求めたらいいかわかるか?
やる夫:
極とカットオフ周波数は対応しているお。まずは伝達関数を計算して、そこから極を求めて、その極からカットオフ周波数を計算すればいいんだお。極はさっき求めたから、そこから計算するとこうだお。
やらない夫:
そうだ。ここで注意したいのはsはjωっていう複素数であるという点だ。極から周波数を出す時には複素数の絶対値をとってjを消しておく事がポイント。
話を戻そう。極の正確な位置について確認しておこう。さっきのボード線図の極の付近を拡大すると実はこうなってるんだ。
話を戻そう。極の正確な位置について確認しておこう。さっきのボード線図の極の付近を拡大すると実はこうなってるんだ。
やる夫:
極でいきなり利得が下がり始めるんじゃなくて、-3db下がったところが極ってことかお。
やらない夫:
そういう事だ。まぁ一応覚えておいてくれ。
あともう一つ覚えてほしいのは傾きだ。カットオフ周波数を過ぎると一定の傾きで下がっていってるだろ?周波数が10倍になる毎に20[db]下がっている。この傾きを-20[db/dec]と表す。
あともう一つ覚えてほしいのは傾きだ。カットオフ周波数を過ぎると一定の傾きで下がっていってるだろ?周波数が10倍になる毎に20[db]下がっている。この傾きを-20[db/dec]と表す。
やる夫:
わかったお。ところで、さっきからスルーしてるけど位相のグラフは何を示してるんだお?
やらない夫:
ローパスフィルタ、というか極を持つ回路全てに共通することだが出力の信号の位相が入力の信号に対して遅れる性質を持っている。周波数によってどれくらい位相が遅れるかを表したのが位相のグラフだ。
やる夫:
周波数が高くなると利得が落ちるだけじゃなくて位相も遅れていくという事かお。
ちょうど極のところは45°遅れてるお。高周波になると90°でほぼ一定になるお。
ちょうど極のところは45°遅れてるお。高周波になると90°でほぼ一定になるお。
やらない夫:
ざっくり言うと、極1つにつき位相は90°遅れるってことだ。
やる夫:
何とかわかったお。
最初は抵抗だけでつまらんと思ったけど、急に覚える事増えて辛いお・・・これでおわりかお?
最初は抵抗だけでつまらんと思ったけど、急に覚える事増えて辛いお・・・これでおわりかお?
やらない夫:
とりあえずこの章は終わりだ。でも、もうちょっと頑張ってもらう。次は今までスルーしてきたsとかについてだ。
やる夫:
すっかり忘れてたけどそんなのもあったお・・・
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