2015年12月30日水曜日

1-3:ローパスフィルタの過渡特性とラプラス変換

1.コンデンサの性質


やらない夫
ここまでローパスフィルタの周波数特性について勉強してきたな。今回は同じRCローパスフィルタの過渡特性について勉強するぞ。

やる夫
過渡特性っていったい何なんだお?

やらない夫
回路にある波形を入力した、出力の波形はどうなる? それを示したのが過渡応答だ。
出力がどんな波形になるかっていうのは、言い換えると「出力電圧が時間的にどのように変化するか」という事だ。

やる夫
つまり、周波数特性ではその名の通り周波数について着目していたけど、過渡応答は時間に注目して回路を見てやろうって話しかお。



やらない夫
その通りだ。
ローパスフィルタの過渡応答を勉強する前に、まずはコンデンサの性質について確認しておきたい。

やる夫
まだ何かあるのかお?

やらない夫
コンデンサの電圧と電流の関係を時間の関数で表したものだ。



やる夫
うわああああインテグラルが出てきたお!やる夫数学は大嫌いだお!!!

やらない夫
ちょっと積分の数式が出てきただけでビビりすぎだろ・・・
だが安心してくれ、これを理解するのはそんなに難しくない。

やる夫
積分が簡単なはずないお・・・無理だお・・・

やらない夫
おまえ数2の微分積分で躓いたやつか・・・
コンデンサの性質はバケツに水をためるのとまったく同じイメージだ。バケツに水を溜めていくとだんだん水位が上がっていくよな。コンデンサはバケツと同じだ。「水」を「電流」、「水位」を「電位」に置き換えるとどうなる?




やる夫
コンデンサに電流を流していくと電位が上がっていくってことかお?

やらない夫
そうだ。この「溜めていく」という行為が積分だ。
次に容量を考えてみよう。容量の小さいバケツと大きいバケツがある。それぞれに同じペースで水を溜めていったらどうなる?

やる夫
同じ量だけ水を溜めたのなら当然小さいバケツの方が水位が高くなるお。


やらない夫
そうだよな。このバケツの容量が"C"(コンデンサの容量値)だ。

やる夫
ん?わかったお!最初の式から考えて、電流i(t)が同じだとしたら、Cが小さいほうが電圧v(t)が大きくなるお!確かに同じだお!
なんかイメージつかめたお!

やらない夫
この積分の式に関してはそんなバケツのイメージを持っておくだけでいい。
ここで一つ訂正なんだが、「電流を溜める」という表現はちょっと間違っている。電流というのは電荷(電子)が移動する事で流れるものだ。だから、「電流がたまる」のではなく、電流を流し込むことで「電荷が溜まる」んだ。

やる夫
OKわかったお。なんとなく戦える気がしてきたお。


2.ローパスフィルタの過渡特性


やらない夫
それじゃあ、コンデンサについて理解したところでローパスフィルタの過渡特性を考えてみよう。

やる夫
さっきのコンデンサの時間の関数を使って式を立てるんだお。

やらない夫
そうだな。それじゃあやってみよう。
まず素直に式を立ててみる。そうするとこんな微分方程式が立つ。



やる夫
・・・・・・・
万策尽きたーーーー!!!!

無理だお!絶対無理だお!解き方がまるでわからないお!っていうか微分方程式って何なんだお!!!拒絶反応がでてるお!!!

やらない夫
お前、もしかしてお菓子屋さんになりたかったりするのか?
冗談はさておき、 そんなに数学的な計算やりたくないのか・・・


でも実はな、やる夫のその感覚は間違っていない。

やる夫


やらない夫
さっきの微分方程式は解こうと思えば解けるんだが、面倒だよな。ましてや、さらに規模が大きい回路の解析となったら死ぬほど大変だ。そんな計算をやりたがるヤツなんて誰もいない。
千恵のある先人は何とか簡単に微分方程式を解けないもんかと考えたんだなー。

そこで出てくるのが「ラプラス変換」だ。

やる夫
・・・なんだお、急にポ○モンの話かお。現実逃避はよくないお。

やらない夫
お前と一緒にするな。ポケ○ンは関係ない。
ラプラス変換を使うととても簡単に微分方程式を解くことができる。

やる夫
・・・で、そのラプラス「変換」ってどういう事だお?

やらない夫
イメージを説明するとこんな感じだ。
時間領域の微分方程式をラプラス変換でs領域の方程式に変換する。
s領域で簡単な計算をして式を整理する。
整理した式をラプラス逆変換して再び時間領域に戻して解を得る。


やる夫
それってシュタゲでいうとオカリンが別の世界線に移動して行動を起こして、元の世界線に戻ってきて世界が救われるとかそんな感じかお。
簡単な計算っていうのは本当に簡単なのかお?それに、そのs領域とやらに変換するのが難しかったりするんじゃないかお?

やらない夫
疑い深いな。s領域への変換はめちゃくちゃ簡単だ。なぜなら、変換表というのがあってそれに従って変換するだけだからだ。逆変換も同様。
s領域での計算は・・・まぁ実際にやってみよう。

やる夫
わかったお・・・とりあえずやらない夫を信じてみるお。

やらない夫
じゃあやってみるか。
まずは入力にどんな波形を入れるか考えなければいけない。ここではステップ波形を入力することにするぞ。


やる夫
ステップってことは階段かお。時間t=0で電圧が1になる入力だお。

やらない夫
さて、ここで早速さっきの微分方程式をラプラス変換をするぞ。変換表はググってくれ。
それに従って変換するとこうなるな。


やる夫
変換表に書いてあるのと同じ式を見つけて置き換えるだけだお。
変換は楽勝だったお!

やらない夫
だろ?じゃあ今度はs領域での計算だ。まずは式を整理してみよう。

やる夫
うーん、整理できたけどこれじゃ逆変換できないお。




やらない夫
そうだな。実はこういうときの常套手段がある。
s領域の計算において分数の積の形になったら「部分分数分解」をして和の形に直すんだ。

やる夫
なんだお、そのブンブンブンっていうのは。

やらない夫
数2でやらなかったか?
解き方はこんな感じだ。



やる夫
お!これで逆変換できそうだお!変換表によるとこうなるお!


やらない夫
いいぞ、これで逆変換できたな。これで最初の微分方程式は解けた。
出力の波形はこんな感じになるよな。



やる夫
え、これで終わりかお?微分方程式なのに変換表にしたがって変換して、簡単な分数の計算しただけで終わったお!これはすごいお!

やらない夫
だろ。ちなみに、周波数特性のときにjωをsって置いたりしたよな。

やる夫
そうかお!あのときやったsっていうのはラプラス変換のsだったんだお!
あの時は初めからs領域で計算をしてたんだお!

やらない夫
そういう事だ。試しにコンデンサの時間領域の式からs領域でのインピーダンスを計算してみろ。

やる夫
時間領域の式がこれだお。で、変換表に従ってs領域に変換して整理すると・・・
Z = 1/sC になったお!!!そういう事だったんだお!


やらない夫
いままでの内容ともつながったようだな。
ちなみに、今回やったのはラプラス変換の使い方だけで、数学的なバックグラウンドは全く説明していない。ただツールとして使い方を覚えただけで本質は一切理解してない事になるから、あまり思い上がるなよ。

やる夫
わかったお。でも、これでだいぶ強くなった気がするお。


[次]1-4:入力インピーダンスと出力インピーダンス



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