今回は超重要な回路、「オペアンプ:operational amplifier」について勉強しよう。
やる夫:
超重要なのかお。オペ「アンプ」って事は信号デカくする回路かお。
やらない夫:
その通りだ。アンプって名前だからオーディオの回路だと思うかもしれないが、オペアンプはいろんなところで、いろんな用途で使われる超有能な回路だ。信号を大きくする用途だけで使われているわけではない。回路あるところにオペアンプあり くらいのものだ。
やる夫:
そんなにすごい回路なら複雑で難しいのかお?
やらない夫:
実はそんなことはない。オペアンプ単体の機能はものすごく単純なものだ。
1.オペアンプの性質
やらない夫:
まずはオペアンプの回路記号だ。
やる夫:
プラスとマイナス、2つの入力端子があるのかお。それに対して出力端子が1つだお。
やらない夫:
まずはプラス端子とマイナス端子の電圧の差をとる。それを利得A倍して出力する。
やる夫:
思った以上に単純だったお。で、その利得ってのはどのくらいなんだお?
やらない夫:
それは使うオペアンプによるが、大体60[dB]~140[dB]くらいだ。
やる夫:
え、それってめちゃくちゃデカいんじゃないかお?100[dB]って言ったら100000倍だお。
やらない夫:
そうだよな。でもな、例えば1Vを入力したら100000Vになるって事だ。さすがにそんな事できないだろ。
だからオペアンプはそれ単体で使うのではなく抵抗などと組み合わせて負帰還のループを作って使う。
だからオペアンプはそれ単体で使うのではなく抵抗などと組み合わせて負帰還のループを作って使う。
やる夫:
負帰還?なんだおそれは。
やらない夫:
それはこれからやろう。
その前にオペアンプの他の性質を覚えよう。
理想のオペアンプは「入力Zが∞」という性質を持っている。
その前にオペアンプの他の性質を覚えよう。
理想のオペアンプは「入力Zが∞」という性質を持っている。
やる夫:
つまり、理想オペアンプの入力端子には全く電流が流れないってことかお。
やらない夫:
その通りだ。この前提条件は頭に入れておいてくれ。実際のオペアンプでは内部素子の種類によって少し電流が流れたりするんだが、ここでは簡単のために入力Zは∞ということにしておく。
2.負帰還
やらない夫:
じゃあ、さっきチラっと話した負帰還(Negative Feedback)についてだ。
やる夫:
帰還って、何が帰ってくるんだお?
やらない夫:
帰還というのは出力を入力に戻す事を言う。
簡単な負帰還の例を見てみよう。
簡単な負帰還の例を見てみよう。
やる夫:
アンプの出力がβっていうブロックを通って入力に帰ってるお。
このβっていうのはなんだお?
このβっていうのはなんだお?
やらない夫:
βはVoutからの信号をβ倍するブロックだ。
ちなみに、ここでは利得Aを∞という事にする。
さて、これらを踏まえてVoutを求めてみよう。
ちなみに、ここでは利得Aを∞という事にする。
さて、これらを踏まえてVoutを求めてみよう。
やる夫:
入力の方から考えていくお。
まずVinが入って、帰還された電圧と引き算をするお。それがA倍されてVoutになるお。
Aが∞である事を利用して近似するとこんな感じだお。
まずVinが入って、帰還された電圧と引き算をするお。それがA倍されてVoutになるお。
Aが∞である事を利用して近似するとこんな感じだお。
やらない夫:
アンプ単体では利得∞だが、帰還をかける事によって回路全体の利得を制御することができる。帰還率βを変えることで自在に回路全体の利得を決められるというわけだ。
やる夫:
アンプ単体だとほぼ∞に増幅しちゃって手がつけられないから、アンプは必ず負帰還をかけて使うってことかお。
やらない夫:
ちなみに、アンプ単体の利得を「オープンループゲイン:Open Loop Gain」、帰還をかけた回路全体の利得を「クローズドループゲイン:Closed Loop Gain」という。
この負帰還はオペアンプの回路に使われているだけではなく、すべてのシステム設計の基礎中の基礎だ。負帰還の真の目的は「系を安定させる」というところにある。
例えばさっきの例でVoutが大きく変動したとする。その変動はマイナスになってアンプに帰還される、つまり変動を打ち消すような信号が帰還されるわけだ。
この負帰還はオペアンプの回路に使われているだけではなく、すべてのシステム設計の基礎中の基礎だ。負帰還の真の目的は「系を安定させる」というところにある。
例えばさっきの例でVoutが大きく変動したとする。その変動はマイナスになってアンプに帰還される、つまり変動を打ち消すような信号が帰還されるわけだ。
3.仮想短絡(仮想接地)
やらない夫:
次はオペアンプを使った回路設計の超重要事項、「仮想短絡」だ。
やる夫:
仮想って事は仮想世界の話かお!やる夫仮想世界もののアニメは好きだお!
やらない夫:
仮想世界とか出てこないから・・・
何がどう仮想なのかっていうのは実際に見てもらった方が早いだろう。
何がどう仮想なのかっていうのは実際に見てもらった方が早いだろう。
やる夫:
オペアンプの基本の式からスタートしてA=∞を利用した近似をするとVb=Vxになるってことだお。
やらない夫:
プラス端子とマイナス端子は全く繋がっていないが、VbとVxは一致する。あたかもつながっているかのように見えるから「仮想短絡:Virtual Short」という。VbがGNDの事もあるから「仮想接地:Virtual Ground」とも言う。
これは負帰還がかかっているときに成立するものだ。
これは負帰還がかかっているときに成立するものだ。
やる夫:
簡単に言うと、単純なオペアンプの負帰還回路では-端子の電圧は+端子の電圧になるってことかお。
やらない夫:
そんな感じでOKだ。これが分かっていれば大体のオペアンプ回路は理解できる。手っ取り早くオペアンプを理解した気分になる万能薬ってところだな。
やる夫:
まぁ分かったけど、前置きが長いお。そろそろ実際の回路を見たいお。
4.反転増幅回路
やらない夫:
まぁそう急かすな。お望み通りここからはオペアンプを使った基本回路を見ていく。
まずは反転増幅回路だ。
まずは反転増幅回路だ。
やる夫:
反転増幅ってことは、入力信号をひっくり返して増幅するって事かお?
やらない夫:
その通りだ。回路はこんな形になる。
やる夫:
オペアンプに抵抗を2つつけただけだお。なんか簡単そうだお。
やらない夫:
まぁ、見ての通りそんなに難しくない。
動作を考えていこう。
動作を考えていこう。
やる夫:
負帰還かかってるから早速仮想接地の登場だお!Vx=0になるお。
やらない夫:
電流の流れはどうなるかわかるか?
やる夫:
確か、最初にやったけどオペアンプの入力端子は入力Zが無限大だからまったく電流が流れ込まないんだお。ということは、R1に流れる電流はそのままR2に流れるんだお。
やらない夫:
そうだな。だからR1とR2に流れる電流は同じだ。
それを使うとこんな式が立つ。
やる夫:それを使うとこんな式が立つ。
これでクローズドループの利得が出たってわけだお。
やらない夫:
この回路の見方について、もう少しだけ理解を深めておこう。
反転増幅回路の仕組みをこんなモデルで考えてみる。
やる夫:反転増幅回路の仕組みをこんなモデルで考えてみる。
抵抗R1が電流源に置き換わってるお。電流源ってなんだお?
やらない夫:
電流源っていうのは電流を流す素子だ。
やる夫:
そのままだお。で、なんでR1は電流源に置き代わるんだお?
やらない夫:
まず、仮想接地でR1の一端は常に0で固定だ。ということは、抵抗R1は電圧Vinをそれに応じた電流Iに変換する役割を果たすことになる。
やる夫:
なるほどだお。で、その電流がR2にながれるわけだお。
やらない夫:
そうだ。今度は抵抗R2に電流が流れ込む訳だから、流れ込んだ電流が電圧に変換されるわけだ。
やる夫:
まとめると、R1でVinを電流に変換して、R2でその電流を受けて電圧として取り出してるんだお。
やらない夫:
そういう事だ。利得の式を覚えるのも大事だが、こういう感じで各素子の働きをひとつずつ理解するのも大切だ。
やる夫:
最初は計算がすべてだと思ってたけどそうでもない事はだんだん分かってきたお。
回路の動作をイメージできるようになれば、覚えることはそんなに多くない気がするお。
回路の動作をイメージできるようになれば、覚えることはそんなに多くない気がするお。
5.積分回路
やらない夫:
次は積分回路だ。
やる夫:
積分の計算をする回路かお?
やらない夫:
うーんまぁそうなんだが、計算とかそんな大層なものではないな。回路図はこれだ。
やる夫:
さっきの反転増幅器のR2がコンデンサに置き換わってるお!
やらない夫:
ざっくり言うと、積分回路はコンデンサの積分の性質を利用した回路だ。
やる夫:
この回路は反転増幅器と同じように考えていいはずだお。
R1は電流源として見なせるわけだから、その電流をコンデンサに流して電荷を溜めるんだお!
R1は電流源として見なせるわけだから、その電流をコンデンサに流して電荷を溜めるんだお!
やらない夫:
そういう話だ。計算はもう大丈夫だろうから、最後の式だけ書くぞ。
やる夫:
RCによる係数があるけど、Vinを時間積分しているだけだお。
やらない夫:
マイナスがついてる事に注意だ。VoutにはVinを時間積分した波形をひっくり返した波形が出てくる。
やる夫:
反転増幅回路と同じ構成だからそれも頷けるお。
やらない夫:
ちょっと話は逸れるが、波形を積分したらどうなるかという事を考えてみよう。
やる夫:
確かに、波形を積分するっていうのはあまりイメージつかないお。
やらない夫:
矩形波の積分を例にとってみよう。
やる夫:
矩形波っていうのは四角い波形かお。
積分は面積の計算だお。時間が増えていったときに面積がどうなるか考えていけばいいんだお。
積分は面積の計算だお。時間が増えていったときに面積がどうなるか考えていけばいいんだお。
やらない夫:
その通りだ。
まずt0~t1の区間。ここではVinはプラスの値で一定だから、時間が増えると面積は一定に増えていく。だから、積分値は一定のペースで上昇していく。
次にt1~t2の区間。今度はVinはマイナスの値で一定になる。時間が増えるにつれて面積はマイナス方向に減っていく。つまり積分値は一定のペースで減少していく。
まずt0~t1の区間。ここではVinはプラスの値で一定だから、時間が増えると面積は一定に増えていく。だから、積分値は一定のペースで上昇していく。
次にt1~t2の区間。今度はVinはマイナスの値で一定になる。時間が増えるにつれて面積はマイナス方向に減っていく。つまり積分値は一定のペースで減少していく。
やる夫:
それを繰り返すから、ギザギザの波形になるってわけかお。
やらない夫:
そうだ。ちなみにこういう波形を三角波っていう。
やる夫:
見た目そのままの名前だお。
まぁとりあえず、雰囲気は掴めたお。
まぁとりあえず、雰囲気は掴めたお。
6.その他の基本回路
やらない夫:
ここまで2つの回路を見てきたが、他にもオペアンプを使った基本回路がある。それらを軽く紹介していこう。
まずはボルテージフォロワ(ユニティーゲインバッファ)だ 。
まずはボルテージフォロワ(ユニティーゲインバッファ)だ 。
やる夫:
利得1倍で入力がそのまま出力に出てくる回路って事かお?そんなのなんの意味があるんだお?
やらない夫:
この回路の目的は信号を増幅する事ではなく出力インピーダンス変換だ。
最初に話していなかったが、負帰還をかけると出力インピーダンスがめちゃくちゃ小さくなるという性質がある。
最初に話していなかったが、負帰還をかけると出力インピーダンスがめちゃくちゃ小さくなるという性質がある。
やる夫:
ちょっとわかったかもしれないお。オペアンプは入力Z無限大だお。だから高出力Zの回路から入力される電圧信号でもロスなく受け取れるんだお。それが負帰還による低出力Zで出力されるってわけだお!
やらない夫:
高出力Zの回路のあとに挟んで低出力Zにする、これがボルテージフォロワの役割だ。こういう役割をする回路を「バッファ」というから覚えておいてくれ。
やる夫:
OKだお。
やらない夫:
次は正相増幅回路だ。
やる夫:
仮想接地でVx=Vinになるお。それを利用して計算すればこの式がもとまるお。マイナスの符号がついてないから入力はひっくり返らずに出力されるお。
やらない夫:
次は減算回路だ。引き算を行う回路だな。
やる夫:
二つの信号の差をとりたいときに使う回路という事かお。
やらない夫:
まぁ他にもあるんだがこのくらいにしておこう。オペアンプを使った回路を挙げたらキリがないからな。
やる夫:
一応、これでオペアンプがどんなもので、どういう使い方をするのかは分かった気がするお。
これで回路設計できるのかお?
これで回路設計できるのかお?
やらない夫:
確かにオペアンプの回路を勉強すると回路作れる気分になってくるんだが、まだまだ勉強することがある。
次は回路の話からちょっと離れて、信号の周波数成分について勉強しよう。
次は回路の話からちょっと離れて、信号の周波数成分について勉強しよう。
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